「AIを活用した課題解決のための仕組みの創出や人材育成」AIのプロフェッショナルが集まったAI総合研究所

日本におけるAI活用はまだまだ進んでおらず、その主な課題は技術者不足とデータ活用環境の不整備と言われています。AIを効果的に活用するには高度なスキルを持つ専門家が必要ですが、国内ではエンジニアの育成が追いついていません。

また、企業が保有するデータの統合や活用が進んでおらず、データの量や質がAI開発の壁となっています。さらに、AI導入に対する経営者の理解不足やリスクへの懸念も普及を妨げています。こうした課題の解決には、教育制度の改革やデータインフラの整備が求められます。

今回、これらの課題を解決するために、AI技術の導入・研究・開発について技術面でのコンサルティング業務やR&D、AI人材育成事業を行うNABLAS株式会社(以下、NABLAS)の代表取締役 中山氏、執行役員 佐野氏に、同社の取り組みやソリューション、今後の展望などについて伺いました。

NABLAS株式会社 代表取締役 中山浩太郎氏

大阪大学大学院情報科学研究科博士号取得後,大阪大学情報科学研究科特任研究員,東京大学知の構造化センターおよび東京大学大学院工学系研究科で助教 / 講師を経て現在に至る。専門はAI、知識処理、Webマイニング、大規模計算。主な著書としては、「東京大学のデータサイエンティスト育成講座」やI. Goodfellow, Y. Bengio著の「Deep Learning」の監訳などを始めとする9冊のコンピュータ科学分野の著書がある。

NABLAS株式会社 執行役員 佐野まふゆ氏

新卒で二輪やガス部品を製造するメーカーに入社し、品質管理や改善業務、図面設計、技術営業、監査対応などに従事。同時期に、マーケティングコンサル系の団体で活動し、その繋がりからヘルスケア系ベンチャーのカスタマーサクセス部門へ入社。2020年NABLAS株式会社に参画し、現在に至る。

目次

企業におけるAI活用に対する課題 NABLAS株式会社 代表取締役 中山浩太郎氏

──現在、地方ではどのような課題があると感じていますか。

中山 地方では後継者不足が深刻で、今まさに困っている企業が多いと感じています。AI脅威論のように「AIに仕事を奪われる」と危惧する声がある一方で、地方では技術を伝承できずに廃業に追い込まれる、という現実があります。人が足りない、技術が継承できないことで、良い企業がなくなる危機に瀕しています。人間がそもそもやるべきじゃないこと、例えば危険な作業や、膨大な情報を処理する業務などにこそ、AI技術を活用していくべきだと考えています。

中山氏が語るように、地方の製造業における後継者不足が進んでいます。多くの工場では、熟練工が引退する一方で、若手の技術者が少なく、技術やノウハウが次世代にうまく継承されていません。特に中小企業では、この傾向が顕著で、事業の存続すら危ぶまれるケースもあります。こうした課題の解決策として、AIの導入が注目されていますが、実際には導入が進んでいない現状があります。

AI技術を活用すれば、熟練工の技術をデジタル化して継承することができ、生産工程の効率化や品質の向上も期待できます。

しかし、AI導入に対する理解不足や、初期投資のコストが障壁となり、多くの企業が慎重な姿勢をとっています。また、AIを活用できる技術者が社内にいないという点も大きな課題です。製造業の未来を考える上で、後継者不足とAI技術の導入促進は避けて通れない問題であり、AIの利便性を理解し、積極的に導入を進める体制づくりが求められています。

引用:経済産業省 生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024

引用:経済産業省 「製造業を巡る現状の課題 今後の政策の方向性」

企業のAI活用を進めるAIコンサルティング/R&D

NABLASでは、AI技術の導入・研究・開発について技術面でのコンサルティング業務やR&Dに取り組んでいます。

様々な業界において保有データの分析・整備、AI導入・活用のご相談、プロジェクト方針のご提案、プロジェクト方針のご提案、プロジェクト設計・予算化を行っています。

AI技術においても、画像認識・分類・検出、ディープフェイク検知、生成ディープラーニングなど幅広く実績があり支援することが可能となっています。

──具体的に人手不足が深刻化する地方の製造業に対してどのような支援を行なっているのでしょうか。

中山 当社は(産業における)後継者不足・人材不足の解消を会社の重要なミッションの一つとして取り組んでおり、 AI技術は後継者不足・人材不足に有効な解決方法であると考えています。例えば、東海地方の製造業の企業様と連携して、工場の自動化、外観検査AIなどの技術開発に取り組んでいます。一般的に、製造業においては作業員によって製造工程や検品作業の精度に違いが発生することがあり、熟練工の特別なスキルをどう継承していくかが大きな課題となっています。私たちは、検品作業において製品の不良をカメラで判定する技術を開発しており、工場に試験的に導入し、成果が出始めています。

──AIによる支援を行っている会社が増えている中、御社はどのような強みがあるのでしょうか。

中山 当社の技術の強みは、少量のデータでもAIが正常品と異常品を判定できる点です。一般的には大量のデータを集めることがAI導入の大きな障壁になりますが、当社の技術ではこのハードルが低く、導入しやすいのが特徴です。また、当社のAIは複数の高性能モデルを組み合わせており、性能の高さと扱いやすさを両立させています。この利便性と精度の高さが当社技術の大きな強みです。

 日本の製造業は非常に優秀で、不良品のデータがほとんど出てこないんです。何千個作ってようやく1つ出るかどうか、故障率も0.0何パーセントというケースもあります。そのため、不良品のデータを集めるのが難しく、通常のAI技術ではこれが大きな障壁となります。しかし、当社の技術では不良品データがなくても、正常品から不良品を検出しやすいモデルを作れることが特徴のひとつです。

未経験からAI活用人材を育成する

AI技術の急速な発展に伴い、さまざまな産業でAIの活用が進んでいますが、その一方でAI人材の不足が深刻化しています。多くの企業がAIを取り入れたいと考えているにもかかわらず、専門知識を持った人材が不足しており、AIプロジェクトが思うように進まない状況です。

AI人材の育成には高度な専門知識が必要で、特に機械学習やデータサイエンスのスキルが求められますが、こうした分野の教育や研修が十分に整っていない企業も多くあります。
また、AIをビジネスにどのように適用すべきかを理解するための知識を持つ人材も少なく、企業内でのAI活用が停滞しているのが現状です。

このため、AI教育プログラムの充実や、AIに関するスキルを持つ人材の確保が今後ますます重要になってきます。企業としては、AI技術を活用できる人材を育成し、現場で実際に活躍できる体制を整えることが急務となっています。

NABLASは、実課題解決をゴールにした実践型のAI研修であるAI人材育成サービス「iLect」も提供しています。

本サービスは、「業務課題を解決出来るようになる」ことを目的とした法人向けDX/AI人材育成サービスです。最先端技術動向や「AI総合研究所」として活動するNABLASが蓄積した知見に触れながら学ぶ実践中心のプログラムが特徴です。

──AI人材育成サービス「iLect」はどのようなサービスなのでしょうか。

佐野 AI人材育成サービス「iLect」は、受講生に寄り添ったカリキュラムを提供しています。受講後にどうなりたいか、ご自身やプロジェクトの目標を描きながら取り組んでいただきます。受講者個人だけでなく、会社全体を1つのプロジェクトとして考え提供しています。また、受講後にはAI開発プロジェクトとしての立ち上げていただくところまで実施しています。これまでのクライアント様も社内での実装をゴールに設定し、高いモチベーションで取り組まれています。

──「iLect」はどのような実績が生まれているのでしょうか。

佐野 サポートさせていただいたプロジェクトのうち、約半数程度は実際のAIプロジェクトに繋げていただけるよう目指して支援しています。メンバー全員でその目標を掲げて取り組んでおり、企業様からは丁寧なメンタリングについて高い評価をいただいています。また、プロジェクト化する際の重要なポイントも細かくレクチャーし、最後には役員の方々にも参加いただいた報告会にて予算をつけていただりというところまで支援することもございます。このような丁寧なサポートとプロジェクト化へのアシストが評価されています。

 地方に拠点を置く企業様にもサービスを提供しており、例えば名古屋や静岡の製造業の企業様がその一例です。これらの企業では、講座を受講することで人材不足の課題解決に向けたメリットを感じていただいています。特に地方では人材の確保が難しいため、自社で育成する必要性が高まっています。ただ、単に講座を受けるだけでは、その後の実装などに多くのハードルがあります。本サービスを通じて、受講生が苦労を乗り越えながら成長し、社内で活躍できる人材となることに価値を感じていただいています。

──地方ではそもそもエンジニアが不足していますが、エンジニアでない方にも効果を発揮するプログラムなのでしょうか。

佐野 AIエンジニアだけでなく、AIに興味がある非エンジニアや文系の方も参加しております。AIプロジェクトにアサインされたのち、概念の検証や実現可能性の評価ができるよう支援しています。最初はプログラミングや数式が得意でない方も、学んでいくうちに興味を持って自発的に勉強するようになり、将来的にはデータサイエンティストを目指す方もいます。文系人材でも、データ分析や統計を駆使したスキルを短期間で身につけ、ほぼデータサイエンティストと同等のタスクをこなせるようになるなどの非常に価値の高い成果を上げています。

AI技術を正しく理解し、課題解決のための導入を目指す

──AIコンサルティングやAI人材育成を通して、どのような世の中を目指しているのでしょうか。

中山 実は、プログラマーの三大美徳の一つは「怠惰」である、という考え方があります。プログラマーは、同じ作業をするために何度も繰り返して時間を使うくらいなら、自動化・効率化するシステムを構築することに労力を惜しまない、という意味です。この考え方に強く共感しており、AIを活用することで人間はもっとクリエイティブな仕事に集中できると考えています。我々は最先端のAI技術やディープラーニングを活用しており、これらの技術を使えば、今まで技術的制約で置き換えられなかった作業もAIに任せることができるようになってきました。これにより、人間が単純労働から解放され、よりクリエイティブな仕事に力を注げる世界を目指しています。この会社でそういった未来に貢献できればという想いで日々取り組んでいます。

──AI活用を進める上で読者へのメッセージをお願いします。

中山 AI技術は社会に大きな影響を与えており、正しい知識を持って学ぶことが重要です。使い方を誤ると危険な方向に進む一方で、怖がりすぎて活用しないと、世の中の流れについていけず産業ごと外国との競争の中で淘汰される可能性もあります。そのため、AIに対しては、正しく恐れながらも、活用すべきところは積極的に活用する姿勢が必要だと感じています。AIの情報を正しく学び、正しく活用していくことが大切だと思っています。

佐野 企業に寄り添いカスタマイズした形でゴールまで伴走する提供形式のほかに、個別に受講できる講座もご用意しています。お試しいただける形で開催日程も設定していますので、ぜひご参加ください。ChatGPTのようなツールは単なる手段であり、その導入だけで全ての課題が解決するわけではありません。当社の講座は、エンジニア、非エンジニア問わずビジネス人材としてのスキル向上を目指しており簡単な内容ではないものも多いですが、その分しっかり活用できるようになります。例えばプロンプトエンジニアリング講座は、他社の講座より難易度が高いかもしれませんが、受講後には確実に活用できるスキルを習得できます。

参考情報

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
目次