地方における接客・受付などのサービス業は、近年さまざまな課題を抱えています。
総務省の調査によると、東京や神奈川、埼玉、大阪などの都市部では人口の転入数が増加している一方で、それ以外の地方では、軒並み人口の転出数が増加しており、都市部への人口集中が進んでいます。この結果、地方の接客・受付業務に必要な人材の確保が困難となり、サービス提供の継続性が脅かされています。

さらに、観光地における多言語対応における課題もあります。観光庁が2024年に実施した調査では、外国人観光客が地方を訪れる割合は増加しているものの、施設スタッフの多言語対応能力に課題があると回答した外国人観光客が全体の約23%を占めています。これは、海外からの観光客が期待するサービス水準を満たす上で、大きな障壁となっています。
これらの課題に対する解決策として、ビーモーション株式会社が提供する「接客オンデマンド」は大きな可能性を秘めています。
このサービスは、AIを活用した対話型接客ツールやオンライン接客ステム、VRを活用した仮想空間における店舗やショールーム制作など、先進的な技術を駆使しています。人材不足への対応だけでなく、多言語対応の強化やデジタル化の推進、さらには接遇スキルの均一化も実現できます。
本記事では、ビーモーション株式会社 マーケティング部の秋山様に地方における人手不足が引き起こす課題や「接客オンデマンド」のサービス詳細、今後のビジョンなど詳しくお伺いいたしました。
引用:総務省 住民基本台帳人口移動報告2020年(令和2年)結果の概要
https://www.stat.go.jp/data/idou/2020np/jissu/pdf/gaiyou.pdf
引用:観光庁 2024年 訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00004.html

地方の現場から見るデジタル普及の壁と目指す解決策

──地方における人材不足に対してどのような課題感を持っていらっしゃいますか?
秋山 地方の現場で感じるのは、デジタル普及率の低さです。例えば、デジタル化を進めるためには、担当者を配置したり、デジタル活用を推進する社員の教育を行ったりする必要があります。しかし、こうした取り組みは費用対効果が明確に測りづらい部分があります。つまり、初期投資としてのハードルが非常に高く、この点が人手不足とも密接に関連していると感じています。
秋山 特に小売業や流通業では特に課題が深刻であると感じています。地方の企業様では、接客や販売機会、サービス提供能力において、人手不足を補うデジタル活用が遅れていると感じていますので、これらの課題を解決できればと考えています。
──地方の現場でもそのような声が多く上がっていたのでしょうか?
秋山 そうですね。デジタル関連のサービスは4年ぐらい前から始めており、例えばリモート接客ツールを使い遠隔で接客を行うサービスを展開していましたが、この接客部分をさらに自動化したいという声は多くありました。
「接客オンデマンド」が変える未来の接客体験

「接客オンデマンド」サービスページはこちら:https://www.bemotion.co.jp/ondemand/
──「接客オンデマンド」とはどのようなサービスなのでしょうか?
秋山 弊社が手掛ける『接客オンデマンド』は、接客や問い合わせ対応など、カスタマーサポートの領域に特化した法人向けのデジタルソリューションです。このサービスの中心には、生成AIを活用した対話システムである『対話エージェント』があります。私たちはその開発や運用をサポートしており、具体的にはデジタルヒューマンを実装したAIアバターやチャットボットの導入を行っています。
秋山 AIアバターは、店舗や施設に設置されたタブレットや自宅のパソコンで、人型アバターを通じて音声やテキストで対話ができる仕組みです。この技術は、特に人手不足が深刻なカスタマーサポート領域で効果を発揮しています。採用が難しい、教育が追いつかない、長期間働いてもらえないといった課題がある中で、AIが人の代わりに業務を補完する役割を果たしています。
──「接客オンデマンド」の活用例について、具体的に教えていただけますか?
秋山 都内の観光案内所に設置した『AI観光案内コンシェルジュ』は、観光案内所のベテランスタッフのナレッジをAIに学習させ、その知識を活かして観光地案内を行っています。さらに、Googleマップと連携し、美味しいラーメン屋や観光スポットなど、訪問者が知りたい場所への案内も可能です。この仕組みは多言語対応しており、地方の観光地でも十分に活用できると考えています。また、外資系テレビメーカー様では、自社製品のラインナップをAIに学習させ、全国約300店舗の家電量販店で活用されています。例えば、来店されたお客様がテレビについて質問しても、店員さんが全てを即答できないことがありますが、AIなら適切な商品を即座に提案できます。このAIは接客だけでなく、新人スタッフの教育ツールとしても役立っています。
秋山 また、お客様相談センターなどのオペレーター業務にも導入を進めています。ここでは、AIがオペレーターの代わりに直接答えるのではなく、模範回答や対応方法をリアルタイムで提示するサポートの仕組みが活用されています。また、営業や販売シーンでのロールプレイにAIを用いる仕組みも注目されています。特に新人社員の教育や、最近課題視されているカスハラ*対策にも効果が見込まれており、多くの企業様から関心をいただいています。
*「カスタマーハラスメント」の略で、客が店員に理不尽な要求や暴言をする迷惑行為のこと
秋山 オンライン上における活用も進んでいます。例えば防災用品のECサイトでは、防災グッズの選び方に困っているお客様にAIアバターがおすすめを提案する仕組みを導入しました。住環境や家族構成を考慮した提案を、24時間365日いつでも受けられるので、EC接客の新しい体験として多くの方に活用していただいています。
──「接客オンデマンド」に対するお客様の評価について、どのような反応を得ていますか?
秋山 AIによる接客の評価について、お客様からは私たちが想像していた以上に高い評価をいただいています。例えば、観光案内所に設置したAIでは、利用された方々を対象にアンケートを行いました。これは、横に設置したボードに満足度をシールで貼る形式の簡単な調査でしたが、10数か国の観光客、数100名の方々が回答してくださり、そのうち8割以上が『大変満足』という結果を示してくれました。AIが対話形式で必要な情報を質問しながら提供できる点が評価されました。観光客の方々は、ガイドブックには載っていない情報を得られたことに満足されていました。こうした体験が、AIならではの付加価値として評価されたのだと思います。
「接客オンデマンド」の強み、オーダーメイドで創る理想の接客DX

──「接客オンデマンド」の強みについても教えて下さい。
秋山 対話エージェントにおけるオーダーメイドによる開発からパッケージされたシステムまで、顧客のニーズに沿ってソリューションを提供できる点です。これまでの導入実績から得たノウハウにより、実現したいことに対する技術面や予算に合わせて、開発から連携パートナーまで全体的な運用設計を得意としています。
秋山 その中でも対話を非常に重視しており、AIが答える内容は、ただ情報を提供するだけではありません。ユーザーの気持ちに寄り添う言葉や、共感を生むフレーズを取り入れています。引っ越しに関する問い合わせには『お疲れ様です』といった一言を添えたり、防災関連の質問には『こういう商品をお求めの際は、これに気を付けてください』といった耳寄りな知識を盛り込んだりします。このような細かい工夫をしています。
秋山 また、アバターのデザインにもこだわっています。キャッチーで派手な見た目ではなく、清潔感があって優しい印象を与える身なりや口調を心がけています。また、大げさでない自然な仕草を取り入れることで、実際にお店で接客してもらいたいと思える理想像をアバターに反映しています。さらに、AIとの対話に対して抵抗感を抱く方もいらっしゃるため、その心理的なハードルを少しでも下げる工夫をしています。結果として、多くの方にとって使いやすく、親しみやすいサービスになればと思っています。
──AIの技術的な強みについても教えて下さい。
秋山 開発リソースを自社で抱えず、優秀な技術やシステムを持つベンダーさんたちとのネットワークを活用して提供しています。コンセプトに賛同してくださったベンチャー企業や技術力の高いベンダーさんたちと連携することで成り立っています。お客様の相談事やニーズに応じて、最適なパートナーと手を組み、最終的に価値あるソリューションをお届けする仕組みです。こうした連携の中で、さらに新しい価値を生み出し、地方のビジネスにも貢献できるのではないかと考えています。
地方ビジネスとAIの架け橋へ、「接客オンデマンド」のビジョン

──「接客オンデマンド」の未来のビジョンについても教えて下さい。
秋山 これまで人同士の会話で成立していたビジネスの形は、今後大きく変化していくと思っています。私たちが目指す世界は、店舗やウェブ上でAIとの会話を通じて商品を購入することが当たり前になる環境です。店舗であれば現在多くのお店が少ない人数で運営されています。店長さんも、スタッフが風邪などで休むと困ります。そうした場面で、このAIのデジタルヒューマンがスタッフの代わりに接客を行うことができれば、大きな助けになります。AIが日常的に接客を補完する環境が整えば、お客様へのサービスの質が安定し、店舗運営の負担も軽減されると考えています。このような仕組みが当たり前になる社会を、私たちはできるだけ早く実現したいと考えています。
──最後に読者へのメッセージをお願いします。
秋山 AIは日常の色々な場面で当たり前のように活用されています。たとえば、Netflixのレコメンドは視聴履歴からのAIによる類似性判断ですし、iPhoneのFaceIDもAIによる画像認識技術です。しかし、ビジネスの現場では、これほどの活用が進んでいないのが現状です。推進する人材の不足や、導入コスト、運用の負担などのハードルが要因だと考えています。こうした課題を一つひとつ取り除いていかなければなりません。そのために、AIが仕事を奪うのではなく、どう共存し、協力していくのかを考えなければならない時代だと思います。
秋山 地方の自治体や企業では、AIへの抵抗感がまだ根強く残っているところも少なくありません。そのため、自社だけで完結してAIを導入しようとするのは難しいと考えています。私たちのような会社が、AIのメリットやデメリットを理解したうえでサポートすることで、そのハードルを乗り越えるお手伝いができると考えています。ぜひ積極的にAIの導入を検討していただきたいと考えています。