AIで個別最適な学びを支援 Classi株式会社の「AIとデータが創る教育の未来」

地方における教育は、日本全体の未来を支える基盤として重要な役割を担っていますが多くの課題を抱えています。特に深刻なのが教員の人手不足と個別最適な教育の実現が進まない現状です。

令和3年度の全国の小・中・高等学校教師不足人数は2,303人と言われており、特に地方では深刻な状況となっており、早急な対策が求められています。

教員の人手不足が地方教育の大きな障害となっており、地方の公立小中学校では、正規教員の採用難が顕著です。2022年度のデータでは教員採用試験の倍率が全国平均で3.8倍であるのに対し、地方では大きく下回る地域もあると報告されています。この低倍率は、地方の教育現場が十分な人材を確保できていない実態を浮き彫りにしています。

さらに、個別最適な教育の実現が進んでいない部分もあると言われています。

こうした課題を解決するためには、政府による包括的な施策が不可欠です。一つの取り組みとして、2020年度から開始された「GIGAスクール構想」は、地方における教育環境の改善を目指しています。すべての児童生徒に対し1人1台の端末配布を進めており、ICTの活用が全国的に進展しています。しかし、ハード面の整備だけでなく、教員のICT活用能力を高める研修や、地方特有の課題に応じた支援策の強化が必要です。

本記事では、地方における教育の課題解決のために、個別最適な学習を実現するAIを活用した教育プラットフォーム「Classi」を提供するClassi株式会社へサービス内容、導入効果、実現したい姿を含め詳しくお伺いいたしました。

引用:文部科学省 令和4年 「教師不足」に関する実態調査
https://www.mext.go.jp/content/20220128-mxt_kyoikujinzai01-000020293-1.pdf

引用:文部科学省 令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について
https://www.mext.go.jp/content/20231225-mxt_kyoikujinzai02-000024926_1.pdf

引用:文部科学省「GIGAスクール構想」
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_0001111.htm

目次

地方の教育の課題に挑むClassi

Classi サービスページより引用
PR統括 椎葉氏

ーー地方の教育現場の課題に関して、感じていることを教えてください。

椎葉 私たちは、日本全国の高校教育をメイン対象にサポートしていますが、地方と都市部では教育機会に差があることを地方自治体や教育委員会、先生方から伺っています。特に地方では、学校の選択肢が都市部に比べて少ないこともあり、1つの学校に多様な学力や背景を持つ生徒が集まりやすいです。その結果、先生が一人ひとりの生徒を進路に向けて指導する負担が増加しており、ここ数年その課題がさらに深刻化しています。

椎葉 また、地方で学校の統廃合が進むことで、学力によって分かれていた生徒たちがより1つの学校に集まるようになっています。その結果、上位層の生徒にとって授業が簡単すぎたり、逆に難しすぎてついていけない生徒もいるという問題です。さらに、「高校全入時代」と呼ばれる今日において、「入試に合格することを目的とするだけでは、学ぶことに対するモチベーションを持続させていくことが難しいという課題が浮き彫りになっています。このような環境では、特に地方の先生方がモチベーションを生み出すための工夫をお求めになっていることをと感じています。

プロダクト本部 プロダクトマーケティング責任者 小橋氏
Classiプロダクトの価値や今後の方向性をお客様にしっかり届けて、
実際に使ってもらい、フィードバックを得る。
顧客や市場に向き合い、主に開発ではなくビジネスに関わる活動をもとにプロダクトを良くして
事業貢献していく横断的なプロジェクトを牽引。

小橋 先生の数が不足しているため、1人の先生が多くの生徒を見る必要があり、生徒が抱えるさまざまな課題に対応することが難しくなっています。特に生徒の進路に関しては重要なテーマですが、1人の先生では1人の生徒に多くの時間を割くことが難しいため、生徒毎に最適な進路を丁寧に指導することも難しくなっていると先生方から伺っています。このような状況では、生徒の学習へのモチベーション低下に繋がってしまう可能性もあります。

個別最適な学びを実現!ClassiのAIが生徒一人ひとりを支える

Classi サービスページより引用

ーー認識している課題を貴社ソリューションでどのように解決しているのでしょうか。

椎葉 私たちは地方自治体からこの課題を解決したいと伺い、教育プラットフォームであるClassiの『学習トレーニング』機能を提供するプロジェクトを実施しました。Classiの「学習トレーニング」機能は、AIが生徒の回答に基づいて適切な問題を提示し、1人ひとりに合わせた学びを提供するものです。子どもたちの学年や学びたい教科、そして学力がバラバラな現場では、個別最適な学びを実現するのが難しいケースが多いため、この仕組みが活用できるのではと思ったためです。生徒たちが自分に合った学びに出会え、また『できた』という体験を積み重ねることで、学びに対する意欲を高める効果があると考えています。また、先生方の負担軽減に貢献したり、結果として多様な生徒の学力向上に貢献できる仕組みを提供できていると感じています。

プロダクト本部 学習PMF部 学習トレーニング開発チーム責任者 坂上氏
Classiの学習領域(学習トレーニング機能)におけるプロダクトの企画・開発を担当。
お客様(学校の先生・生徒)にとって役立つプロダクト価値を追求し、さらに継続的に利用していただけるプロダクトの創造を主軸に活動。

坂上 AIを活用して、生徒個別の目標に応じた最適な学びを提供するソリューションを提供しています。従来は人力で対応するのが難しかった部分でも、AIならではのサポートが可能です。例えば、ベネッセグループの進研模試データを活用し、生徒ごとの学力状況を数値化して把握します。そして、目標GTZ*1を設定し、生徒が希望する進路や志望大学に到達するために必要な学力との差を可視化します。この目標値とのギャップを埋めるための課題を、AIが統合的に提示するのが大きな特徴です。こうした仕組みによって、生徒一人ひとりに最適な学習体験を提供しています。

*1目標GTZ(ジーティーゼット):「学習到達ゾーン」の頭文字を取った略語。ベネッセのテストの得点から全国における生徒の学力の位置をS1~D3の15段階(進路マップ基礎力診断テストは21段階)で評価したもの。自身が目標とするGTZを設定することで、目標を意識しながら学び、目標とのギャップを知りながら学びの軌道修正ができるようになる。

プロダクト本部 学習PMF部 部長 安部氏
Classiの「学習トレーニング機能」を初めとするClassiの学習系機能開発の責任者

ーー個別最適な学びを実現するAIについて、どのような仕組みになっているのか詳細についても教えてください。

安部 これまでのテストは紙のプリント形式が中心で、クラス全員が同じ内容に取り組んでいました。しかし、実際にはクラス内の学力はバラバラです。そこで、ClassiのAIでは、テストの結果をもとに個々の生徒に適した問題を出題します。問題を解いた後、正答率に基づいて新たな問題が1人1人に最適化され出題されます。AIは正解・不正解の内容を分析し、不正解だった問題が何に関連するのかを特定し、間違えた部分に合わせて優しい問題を出し、正解が続くと少しずつ難易度を上げていきます。逆に、間違いが多ければさらに簡単な問題を提示し段階的に学力を伸ばしていきます。こうしたプロセスを繰り返すことで、テストや演習がその生徒にとって最適な内容にカスタマイズされ、学びが深まるよう設計しています。また、 間違えた問題に関連する5分程度の動画を提示し、生徒が効率的に問題が解けなかった時の理解の手助けができるよう工夫しています。

坂上 また、生徒たちが限られた隙間時間を有効に使えるように学習環境も最適化しています。中高生は忙しい日常を送っているため、教科書を広げて1時間集中して学習する時間を確保するのは難しいです。そこで、Classiではスマホで使いやすいUIを採用しています。例えば、登校中の電車やバスの中、ご自宅での休憩時間などに、少しの時間で学べます。長い動画や連続した講義形式ではなく、1問1問解けるように問題を分割したり、短い動画でポイントを伝えたりしています。隙間時間でも効率よく学習できるだけでなく、長く継続して活用できるように設計されています。

小橋 生徒が学習トレーニングを継続しやすいUIを追求するだけでなく、先生にも活用していただけるよう工夫しています。私自身、プロダクトマーケティングの立場から、先生が学校の中でどのようにClassiをご利用いただくことが効果的かを考え提案しています。例えば、Classiはベネッセの進研模試と連携しており、模試前後での活用方法を先生にプロモーションしています。長期休暇中の学習方法や、年間のスケジュールに沿った利用法についても先生に情報をお伝えしています。先生が日常の授業や年間計画の中で自然にClassiを活用できるようにすることが、結果的に生徒の学習効果を最大化する鍵だと考えています。

Classi サービスページより引用

ーー個別最適の学びを実現しているClassiですが、学力向上の成果はいかがでしょうか。

坂上 Classiを活用することで、学習に取り組む姿勢や学力の変化という面で、着実に成果が出ています。例えば、AIを使ったおすすめ問題を頻繁に解いた生徒とそうでない生徒を比較したところ、ベネッセの進研模試の偏差値に差が生まれたという結果がありました。このように、AIを活用することで、短期間でも学力が向上する実績が数字で見えてきています。学習のタイムパフォーマンスも非常に重要です。同じ時間をかけるなら、自分の学力向上に最適な問題を選ぶことが重要になります。ただ、その問題選び自体が難しいんです。簡単すぎる問題では実力がつかず、難しすぎると解けずに力がつきません。Classiでは、AIがその子に合った最適な問題を提示することで、効率的に学習を進められる仕組みを整えています。この仕組みのおかげで、回数を重ねるごとに生徒の学力が伸びる結果につながっています。

学校現場を支えるClassi!先生と生徒と一緒に創り上げるプロダクト

Classi サービスページより引用

ーーClassiを導入した現場の声や反響、効果について教えてください。

小橋 Classiを導入いただいた学校の生徒さんのアンケート結果から大きく2つ貴重なご意見をいただきました。1つ目はUIに関する部分です。例えば、数学の問題を解く際、途中の計算過程を記録するメモ機能を求める声がありました。現時点では実現可能性を検討中ですが、生徒が自分の進捗をより視覚的に把握できるといった操作性の向上は重要だと感じています。もう1つは、学習のモチベーションや達成感を高めるための工夫についての要望です。このようなフィードバックを活かして、より良いプロダクトを目指していきたいと考えています。

※熊本県多良木町へのClassi導入詳細はこちら

安部 学習の理解度が向上したという報告を多くいただいています。例えば、生徒自身が自分の苦手な分野に気づき、そこを繰り返し学習することで、理解が深まったという声が多いですね。ClassiではAIが適切な問題を提示してくれるため、生徒が『この問題が解けない』と実感しやすいです。さらに、過去の学習履歴に遡って原因を探ることもできるので、何が分かっていないのかを特定しやすい仕組みになっています。

椎葉 Classiを導入してから、子どもたちが自分のペースで学べる環境が整ったことで、学習に対する自信をつける子が増えています。特に全員が同じ問題を解くのではなく、それぞれに合った内容に取り組む仕組みがポジティブに働いています。また、短時間で集中して学習できる点も大きいですね。タイムパフォーマンスが良い形で学習に取り組めるため、自然と学習が習慣化されているように感じます。解説動画もすぐに見られるので、やる気やモチベーションへもつながっています。」

熊本県多良木町へのClassi導入プレスリリースより引用

ーー個別最適な学びが学力向上のみならずやる気やモチベーションへもつながっているのですね。

安部 勉強が苦手な生徒さんから話を聞いて気づいたことです。同じ問題を解いている時には、隣の生徒が問題を解いている様子を見て、自分が解けていないことに気づくと、どうしても嫌な気持ちになってしまいます。ClassiはAIを活用して学習を個別最適化することで、そうした問題を解消しています。生徒それぞれに合った問題が出題されるため、隣の生徒と自分を比較する必要がなくなり、勉強に対する苦手意識を軽減することができました。特に、『勉強が嫌いにならないようにする』『苦手意識を持たせすぎないようにする』という点に特化できたのは大きな成果だと感じています。また、Classiでは問題演習を中心に据え、生徒が苦手分野や単元を明確に把握できる仕組みを取り入れています。わからない部分については動画やAIによるサポートも充実しています。生徒の声からも『解説が丁寧でわかりやすい』『わからなかったことができるようになった』といったポジティブな意見が寄せられています。

個別化された学びから伴走型の学習サポートAIへ

Classi サービスページより引用

ーー今後はClassiをどのようなプロダクトにしていきたいとお考えでしょうか。

安部 もっと1人ひとりの力やペースに合わせた伴走型のサポートを強化していきたいと考えています。現時点でも、生徒が問題を解けたか解けなかったかといった理解度を把握する仕組みは整っていますが、それだけではなく、生徒自身が『わかった』『できた』と実感できる瞬間をもっと増やしていけるのではないかと感じています。例えば、全員が同じ方法で学ぶのではなく、それぞれの目標に応じた学び方を提供することが重要です。Classiでは、生徒が目指す目標に合った学びを実現する仕組みがありますが、今後はその目標をより詳しく知り、その目標や学びの進め方をより個別化し、その子にとって『自分にぴったり』と思える学習体験を届けられるよう進化させていきたいと考えています。

坂上 Classiでは、生徒一人ひとりの学びを個別最適化するだけでなく、例えば、高校1年生から高校3年生になるまでの学びの道筋や、大学受験に向けたスケジューリングや道筋を促す部分もAIでサポートできると思っています。私たちはベネッセグループの一員として、多くの学校で進研模試が活用されており、過去の成功事例や膨大なデータを蓄積しています。これらのデータをAIに取り込むことで、生徒の現状と目標を照らし合わせ、最適な学習プランを提供していきます。これが他社との違いであり、Classiならではの強みです。このAIによるデータ活用により差別化につながるとともに、生徒一人ひとりの成長を支える力になると確信しています。

Benesse進研模試の連携によるClassiの教育データ基盤

Classi サービスページより引用

ーーClassiならではの強みについても教えてください。

小橋 ベネッセのテストと連携した学習トレーニングの取り組みを中心に、生徒の学習状況や成果を多角的に支えることができる点です。例えば、学習トレーニングでは問題の取り組み数や正解数が記録され、学習記録機能では1日の振り返りや学習時間を記録することができます。私たちは、これらの機能で蓄積された膨大な生徒データを活用することができます。生徒データとAIを活用することで、生徒の多様性に応じた指導やサポートの内容をより個別化できると考えています。生徒のモチベーションが上がらないことや先生が生徒の多様化に十分対応できていない現場の課題に対して、データとAIを活用して生徒や先生にどこまで寄り添えるかが、私たちの挑戦だと感じています。

坂上 AIの活用により先生の負担を軽減するだけでなく先生と生徒のコミュニケーションが一層深まると考えています。紙の問題集だけでは、生徒がどのように勉強しているのか、先生が直接目で見ることは難しいです。しかし、Classiを活用することで、先生は生徒がどのタイミングで、どんな問題に取り組んでいるのかを把握できます。さらに、模試の結果だけではなく、結果に至るプロセスや学力の変化を確認できます。この『見える化』が先生にとって非常に大きな価値をもたらしていると感じています。先生一人では気づけないことや人の目では見逃しがちな部分をAIが補い、それを先生に届ける。そして、先生が得た情報を生徒に還元していくサイクルを伴走しながら広げていきたいと思っています。

生徒の成長をみんなで支える!Classiが実現する教育の可能性

Classi サービスページより引用

ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。

小橋 熊本県多良木町での取り組みを通じて、改めて現場の方々の視点がいかに重要かを感じました。現場では先生方、教育委員会、自治体の方々、保護者の方々が、生徒一人ひとりの成長や課題に深く向き合っています。私たちが現場の課題感を正確に捉え、それに応えるプロダクトを創れるかがClassiの価値に直結すると感じています。完成した製品を提供するのではなく、プロダクトを“育てていく”姿勢で取り組んでおり、現場の声を反映し現場と共に成長するプロダクトを目指しています。

坂上 今の時代、中高生だけでなく、先生や地方の自治体の方々、そして保護者の皆さんが一丸となって生徒を見守る仕組みがとても大切だと感じています。Classiを活用することで、保護者が働いている時や、先生が学校で忙しくしている時でも、学校での様子や家庭での学びの状況をシームレスに共有できる環境を作り、みんなが常に生徒の成長を支えられる状態を実現していきたいと思っています。

椎葉 実際に地方の学校や生徒たちと触れ合う中で感じるのは、体験機会の違いがあることです。一方で、地方ならではの視点や自分事として物事を捉える力が育まれている場面も多く見受けられます。Classiが目指すのは、個別最適な学びを実現しそれぞれの子どもの可能性を開花させることです。地方にも都市部にはない強みや特性があるため、多様な環境で学力を伸ばすことにより、地方の子どもたちが自身と社会の未来に貢献できる力を育むことができると考えています。Classiは、こうした地方の強みも引き出しながら、支援できるプロダクトを目指して、教育現場に貢献していきたいと思っています。

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