地方では人口減少と高齢化が進み、公共サービスを今までと同じ形で維持しにくくなっています。2024年の総務省統計局の人口推計では、65歳以上は3,624万人で、総人口に占める割合は29.3%と過去最高です※1。
高齢者が増えるほど、見守りや福祉、移動支援などの需要は増えますが、担い手となる自治体職員や専門人材は十分に確保できず、日々の運営そのものが重くなります。さらに市町村合併などで行政区域が広くなると、道路、河川、用水路などの管理範囲も広がり、現地確認にかかる移動時間だけでも積み上がります。
加えて防災面の負担も増えています。気象庁は、全国の「1時間降水量80mm以上」の年間発生回数が増加しており、1976~2024年の統計で10年あたり2.4回増えていると示しています※2。豪雨時は河川水位や冠水、通行止めなどが短時間で変わり、積雪期は除雪の出動判断も求められますが、情報が点在すると確認に時間がかかります。
こうした状況の中、限られた人員でも現場の状況を的確に把握し、迅速に対応できる環境づくりが求められています。
このような課題に対して、株式会社インテックでは自治体向けに「エリアデータ利活用サービス」の活用を推進しています。IoTのリアルタイムデータや国の公開データなどをデータ連携基盤上で集約し、地図やBIツールで分かりやすく見える形にまとめます。
その活用例の一つとして、雨量や河川水位、道路・河川のカメラ画像、避難所情報などを一つの画面で確認できるため、現地に行く回数を減らしながら、避難の判断や出動の段取りを早めやすくなり、分野ごとに散らばった情報をつなげて使える状態を作り、少ない人数でも広い範囲を管理しやすくします。
今回、本サービスの狙いや具体的な活用方法について、同社自治体DXソリューション部の森氏と中瀬氏に詳しく話を伺いました。
※1 引用元:総務省統計局「人口推計(2024年10月1日現在)」
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2024np/index.html
※2 引用:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html

左:森氏、右:中瀬氏
現場が抱える防災・高齢化・人材不足の3つの課題
ーー「エリアデータ利活用サービス」を始められたきっかけや、生活インフラ・行政サービスの課題について教えてください。
森 認識している課題は大きく3つあります。1つ目は、人口減少や高齢化の加速によって公共サービスの維持が困難になっている点です。2つ目は、自治体職員や専門人材が不足していることです。3つ目は、行政分野では、デジタル化の進展にばらつきがあり、非効率な業務プロセスが一部に残っている点です。
森 たとえば富山県では、平成の市町村合併によって1つの自治体が管理する範囲が広がったこと自体が課題になっています。また、防災も大きな課題であり、富山県は河川や用水が多く、近年はゲリラ豪雨による被害があります。加えて、積雪も毎年あり、除雪対応など市民の生活の安全を維持する防災対策が重要になっており、自治体の対応が強く問われていると認識しています。
ーーこれらの課題は、実際に自治体職員の声を聞きながら把握されているのでしょうか。
森 そうですね。当社は自治体DXソリューション部として、普段から自治体のお客様とメインに仕事をしており、自治体職員の方と関わる機会が多く、日々の業務の中で直接「こういう悩みがある」といった相談を受けることが多いため、そうした現場の声から課題を把握しています。
IoTとオープンデータで地域課題を解決する
ーー「エリアデータ利活用サービス」の概要について教えてください。
森 「エリアデータ利活用サービス」は、IoTセンサーから取得されるリアルタイムデータや、国・自治体が公開しているオープンデータなど、さまざまな情報をデータ連携基盤に集約し、地図やBIツールで可視化することで、データの活用を促進するサービスです。当社はこれまで医療・金融・産業など幅広い分野でサービスを提供してきましたが、自治体向けには、システムの導入から保守・運用まで一貫して支援しています。特にIoTの活用を通じて、自治体が抱える課題の解決を支援し、職員の方と連携しながら実運用まで伴走しています。
ーー「エリアデータ利活用サービス」はどのような事例があるのでしょうか。
森 一つの事例として、河川の水位監視があります。富山県では用水路や河川が多く、大雨時には小さな河川や用水が溢れ、冠水が発生することがあります。そのため、水位の変化を早期に把握し、避難指示の判断や水門の操作など、迅速な対応が求められていました。そこで、水位センサーを設置するとともに、気象庁の雨量データなどのオープンデータと連携し、それらの情報を地図上で一元的に確認できる仕組みを構築しました。
森 自治体が設置したセンサーの情報だけでなく、国などが管理しているデータも含めて総合的に状況を把握できるようになりました。その結果、水位の上昇状況をもとに適切なタイミングで避難指示を出すことが可能となり、防災対応の効率化と住民の安心につながっています。

森 もう一つの事例は、山間部に設置された箱罠(はこわな)の監視です。イノシシなどの有害鳥獣を捕獲する箱罠は山間部に設置されていることが多く、猟友会の方々が定期的に現地を見回る必要がありました。しかし、山道の移動は危険が伴い、作業負担も大きいという課題がありました。
森 そこで、箱罠にセンサーを設置し、罠が閉まった際にセンサーが反応して通知を送る仕組みを構築しました。罠の作動情報はメールで猟友会の方に通知されるため、罠が作動した時だけ現地を確認すればよくなりました。この仕組みにより、不要な見回りが減り、安全性の向上と作業の効率化を実現することができました。

ーー「エリアデータ利活用サービス」はオーダーメイドで開発されているのでしょうか。
中瀬 サービス開始当初は個別開発に近い形でしたが、現在はさまざまなメーカーのセンサーと接続できる共通基盤として提供しています。当社はセンサーの製造は行っていないため、複数のセンサーメーカーと連携し、お客様が既に利用しているセンサーも含めて接続できる仕組みを提供しています。
中瀬 また、オープンデータについても、お客様の目的に応じて自由に追加・活用することができます。初期セットアップの支援も行っており、例えば以下のようなデータを組み合わせて活用できます。
- ハザードマップ
- 気象庁の降雪量・雨量・気温・風速などの気象データ
- 国や自治体が公開している河川・道路の監視カメラ映像
- 避難所情報
これらのデータを地図上で一元的に確認できるため、状況把握や意思決定を迅速に行うことが可能になります。
危険の早期察知や業務負担の軽減の実現へ

ーー「エリアデータ利活用サービス」を導入したことで、どのような効果がありましたでしょうか。
中瀬 箱罠の監視では、罠が作動した時のみ通知を受けて現地に確認に行けるようになったため、見回りの回数が大幅に減り、作業負担の軽減と安全性の向上につながりました。また、河川や用水路の水位監視においても、水が溢れる前に水位の上昇を把握できるようになり、早期対応が可能になりました。
中瀬 一方で、市町村が管理する小さな用水路では、「溢れた」という連絡を受けて現地に到着した頃にはすでに水が引いており、状況を正確に把握できないこともあります。しかし、センサーを設置して継続的にデータを蓄積することで、実際にどの程度の頻度で、どのような条件で水位が上昇しているのかを客観的に把握できるようになりました。
中瀬 例えば、1年分のデータを分析することで、「この用水路はこのように改修すべき」といった具体的な判断が可能となり、インフラ整備の計画立案にも活用され、危険を早期に察知するためのリアルタイム活用だけでなく、蓄積したデータをもとに行政施策や工事計画に反映できる点も、大きな効果の一つです。また、ある場所での観測結果を踏まえて、別の場所にもセンサーを設置するなど、段階的に活用範囲を広げていく取り組みも行われています。
中瀬 除雪や積雪では、除雪車の出動判断に活用されています。積雪何センチから出動するか、事業者が現地の状態を見て判断することもありますが、道路に設置したカメラ画像を見て、ここは降り出したから出動しようと判断でき、とても役に立っていると聞いています。
ーーインテック様の強みどのようなものでしょうか。
中瀬 当社の強みは、単にシステムを提供するだけでなく、自治体に寄り添いながら課題解決を支援する「伴走型支援」にあります。自治体ごとに異なる課題に対して、これまで蓄積してきたノウハウをもとに、最適なセンサーの種類や設置方法、データの活用方法をご提案しています。また、オープンデータについても、「こういったデータが活用できます」と具体的に提案しながら、組み合わせて活用できるよう支援しています。このように、課題の整理から導入、運用、活用までを一貫して支援することで、自治体が継続的にデータを活用できる環境づくりを実現しています。
データの力で地域の可能性を引き出す

ーー「エリアデータ利活用サービス」を通して、どのような地域社会を実現していきたいと考えていますか。
森 本サービスの強みは、分野横断したデータの連携や可視化が低コストでできること、専門的な知識がなくても自治体職員の方々で運用が可能な点です。「エリアデータ利活用サービス」を、自治体だけでなく民間企業や、データを公開することで教育機関など、地域の多様なステークホルダーの皆さんに活用していただきたいと考えています。
森 それを通して、データの収集だけでなく、データの組み合わせや共有をきっかけに新たな価値を発掘し、新規事業の創出や産学官民の共創を促していきたいと思っています。その結果、地域課題の解決や魅力の発信につながり、住民の日々の暮らしが誇りに思える、より良い社会、持続可能で愛されるまちの実現を目指したいと考えています。
ーーメディアの読者である地方自治体や地方の民間企業に向けて、メッセージをお願いします。
森 私たちが提供している「エリアデータ利活用サービス」は、地域づくりの土台になるものだと思っています。日々の業務改善や新規事業の創出を支援するものとして、まずは身近なテーマから一緒に取り組み、魅力あふれるまちづくりの実現に向けて進めていきたいと考えています。検討から運用までしっかり伴走支援していきますので、ぜひ魅力あふれるまちづくりを一緒にしていきましょう。
中瀬 現在、自治体の皆様と取り組む中で、市民の方々のためになるデータは、自治体が保有しているものだけではないと感じています。インフラに関する情報など、市民の皆様が必要としているデータは多く存在しています。そのため、自治体だけでなく、さまざまな地域のステークホルダーがデータを持ち寄り、共有・活用することで、住みやすさの向上や観光振興、防災対策に役立てることが重要だと考えています。こうした取り組みを通じて、地域の活性化につながり、安全で安心して暮らせる地域づくりを支えるサービスを提供していきたいと考えています。

