地方自治体では、少子高齢化と人口減少に伴い、限られた人材と予算の中でいかに業務を効率化するかが課題となっています。
内閣官房の調査によると、デジタル施策に「取り組んでいる」と回答した自治体は1,754団体と全体の98.1%に達していますが、その多くは基幹システムの導入などにとどまり、自治体職員の負担を大幅に減らすことのできる自動化・DXはまだ十分に進んでいません。
例えば、長野県塩尻市では電子申請とRPAで年間2,090時間(67.6%)削減していますが、地方自治体のAI導入事例は音声認識や文字認識、チャットボットによる応答などがメインであり、まだまだ限定的な範囲となっています。
特に広報業務や文書作成など住民への情報発信に関する業務は、多くの時間と労力を要する分野であり、たとえば、バナーやチラシ、告知文といった広報物の制作には以下のような課題が存在します。
・職員ごとのデザインスキルの差
・複数サイズや媒体ごとのデータ書き出し
・自治体独自のブランドガイドラインやアクセシビリティ対応
・限られた時間とマンパワーの中での短納期対応
こうした中、注目を集めているのがAIと専門デザイナーが連携するバナー生成サービスです。作成したい画像の説明文を簡易的に入力するだけで、AIが配色やレイアウト、フォントなどのデザイン案を自動生成し、それをプロのデザイナーが微調整して高品質なバナーを完成させる仕組みです。完成データはSNSやWebサイト、デジタルサイネージなど複数媒体に展開ができるため、発信のスピードと広がりの向上へ繋がります。
今回、AI×デザイナー連携バナー生成サービスを導入している静岡県庁の広聴広報課 竹川様に画像生成AIサービスの詳細や効果などについて伺いました。
引用:内閣官房「令和6年 各地方公共団体のデジタル実装状況及び今後の推進方針」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai16/siryou1r.pdf
引用:総務省「令和5年 自治体DXの推進に向けた取組について」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/20231114/pdf/shiryou1.pdf
引用:総務省「令和6年 自治体におけるAI・RPA活用促進」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000934146.pdf

発信する情報量が多い・情報がわかりにくいという課題
――「AI×デザイナー連携バナー生成サービス」を導入された背景を教えてください。
竹川「きっかけは県政世論調査でして、「県政に関心がない」と回答した人のうち、関心がない理由として「県の政治や行政は分かりにくいから」と回答した人の割合が最も高かったことです。その結果を踏まえ、情報を分かりやすく発信する必要がありました。県のホームページやSNSは文字情報が多く、直感的に伝わりにくい内容だったので、画像を使って視覚的に情報を伝えたいと考えていました。」
――導入にあたり、どのような課題があったのでしょうか?
竹川「文字情報だけでなく、イラストなどビジュアルで一目で伝わる表現にしたいと思ってはいたものの、県庁には専任のデザイナーはおらず、各事業の担当者が委託や自作でチラシなどを作っていたため、予算確保や作業の効率化が課題となっていました。」
AIで簡単にバナー画像を生成!AI×デザイナー連携サービス

――「AI×デザイナー連携バナー生成サービス」の具体的な仕組みについて教えてください。
竹川「はい、本サービスでは、静岡県の職員が専用のフォームに文字情報を入力したり、作成したい画像の色味やテイストを選択できるようになっていて、作成依頼をすると最短20分で生成できるサービスです。特徴としては、AIによる画像生成だけでなく、デザイナーの方の確認も入ることでして、画像の修正にも納得いくまで対応していただけるサービスです。」
――どのようなテイストの画像ができるのか、実際の事例があれば教えていただけますか?
竹川「はい。たとえば、静岡県のホームページに掲載している“県政世論調査”のページなどでも、画像生成AIを使って作成したバナーを使用しています。ページ冒頭にある文章をそのままコピーして専用フォームに入力しただけで、イメージに合った画像が自動で生成されました。右上にある富士山をモチーフにした静岡県のイメージキャラクター「ふじっぴー」も、県のキャラクターとして自分たちで用意した画像をシステムにアップロードして挿入したものです。」
[「AI×デザイナー連携バナー生成サービス」で生成された画像]

――納品までの時間や、修正対応についてはいかがでしたか?
竹川「最短で20分ほどで完成しますがデザイナーの確認が入るため、画像によってはそれ以上かかることもありました。ただ、修正したい場合は、速やかに対応いただける仕組みになっておりました。システム上で、画像の修正したい箇所の修正指示を入力するだけの簡単な作業でした。」
――完成する画像のクオリティや修正の頻度について、どのような印象をお持ちですか?
竹川「基本的には、イメージ通りのものができていると感じています。作成依頼後に入る修正も、『この部分のイラストを少し変えてほしい』といった細かい内容がほとんどです。ただ、まれに想像していたものと少し違う仕上がりになり、「異なるイメージにして」と修正指示することもありますが、大多数の職員には満足してもらえています。」
竹川「デザインに関しては単に絵が綺麗というだけではなく、行政の目的や雰囲気に合ったイメージでイラストを仕上げてくれるところが良い点です。」
「また使いたい」声が続出!静岡県職員の期待値を超えたAIバナーサービス

――サービス導入後の反響についてお聞かせください。
竹川「はい。利用後に提出してもらう報告書では、大多数が“大変役に立った”と回答しています。今年実施したアンケートでも、“画像作成の時間が大幅に削減された”という声が多く、従来1時間程度かかっていた作業が、このサービスを使うことで3時間でできたという意見もありました。専用フォームに文字情報を入力するだけで、ホームページに掲載するような画像が作れるので、大変好評です。」
竹川「そのため、多くの職員から“また利用したい”という声をもらっています。毎年契約している関係で、年度始めや年度末は利用できない期間があるのですが、その間にも“いつから利用できるのか?”という問い合わせが多く来ており、期待とニーズの高さを実感しています。」

静岡県庁では130課以上で導入され、年間500件以上の広報物制作に活用されています。 利用者満足度は98%を超え、「業務効率が格段に上がった」「デザインのクオリティが高い」といった声が寄せられています。
このサービスの利用により、広報資料の視認性が向上し、イベント参加者の増加やSNSでの反応向上といった成果が報告されています。
――AIを導入する上で必要なものはなんですか?
竹川「予算の確保に加えて、庁内で効率よく画像生成AIサービスを運用できる体制づくりも必要になります。静岡県庁では、生成サービスを速やかに使えるように、庁内の運用方法が煩雑にならないことを意識しています。また、導入初期には“AIでどんな画像ができるのか”や“どんな場面で使えばいいのか”といった声も多く、イメージが湧かないという点も課題でした。そのため、他所属で作成された画像を庁内で共有し、利用イメージを持ってもらえるような取り組みを行いました。」
――今後の運用方針についてお聞かせください。引き続き同じサービスを活用されるご予定でしょうか?
竹川「昨年度は、600件の画像生成を行い好評でしたので、今年度も引き続き本サービスを運用していく予定です。ただ、先ほども触れたように、理想と少し違うものができるケースもあるので、今年度はプロンプトの入力方法や事例の紹介など、庁内のサポートをより強化していくつもりです。」
“伝える”から“伝わる”情報発信で幸福度日本一を目指す

――最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いします。
竹川「今回のAI×デザイナー連携バナー生成サービスですが、実際に利用した職員から想像以上に多くの好評価をいただき、導入して本当によかったと感じています。引き続き、こうした支援ツールを積極的に活用し、県民にとって分かりやすい情報発信に努めていきたいと思っています。」
――あわせて、現在静岡県で進めている取り組みについてもご紹介いただけますか?
竹川「静岡県では現在、急速な時代の変化に的確に対応し、新しい時代を切り拓くため、「次期総合計画」の策定作業を進めています。また、県民一人一人の幸福実感を重視する「ウェルビーイングの視点」を県政運営に取り入れ、県民の幸福実感を把握しながら政策の充実・強化を図り、“幸福度日本一の静岡県”を目指していきます。」

