地方の介護現場の課題解決へ EMC Healthcare株式会社の「AI×データによる統合見守りシステム」

地方の介護現場では、見守り業務の負担が増大し、職員不足が深刻です。厚生労働省は介護職員の将来必要数を公表しており、2022年には介護職の職員数の必要数が約215万人でしたが、2026年度には約240万人が必要と見込まれています。一方で、この25万人の職員の必要数の増加に対する現状の供給見込みには大きなギャップがあり、地方では都市部以上に人材確保が困難な状況が続いています。

このような厳しい労働環境の中で、施設職員は夜間巡回や常時目視による見守りに多くの時間を割かざるを得ず、身体的・精神的負担がかかっています。また、介護現場におけるICT・見守り機器の導入状況を示す厚生労働省のデータによれば、見守り機器の導入率は30%にとどまり、依然として多数の施設が手作業による監視に依存している状況が明らかです。

さらに、高齢者の転倒・離床・呼吸異常などのリスクは年々高まっており、異常兆候を早期に把握できなければ重大事故につながる恐れがあります。厚生労働省の事故報告では、介護施設での転倒・転落は最も多い事故類型であり、日常的な見守りの質と量が安全確保に直結していることが示されています。

人材不足、ICT未導入による作業負担の増加、そして高齢者の安全確保という複数の課題が同時に進行している地方の介護現場では、従来の人手を中心とした見守りだけでは十分なケア体制を維持することが難しくなっています。こうした背景が、現場での業務効率低下と職員定着の難しさを招き、地域全体の介護サービスの質にも影響を及ぼす深刻な課題となっています。

そこで、EMC Healthcare株式会社が提供する「見守りセンサー」と「ナースコール」を統合した介護施設向けオールインワンシステムOwlCareが注目されています。施設の複数機器を統合し、離床・呼吸・心拍・姿勢変化などの異常をAIがリアルタイムで検知し、夜間巡回・目視負担を大幅に軽減します。地方における人材・設備の制約を補いながら、安全性と業務効率を同時に高めることのできるソリューションであり、今回同社取締役 ヘルスケア事業部長 浦上氏に詳細をお伺いしました。

引用:厚生労働省 令和7年 介護人材の確保について
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001485589.pdf

引用:厚生労働省 令和4年 ICT導入状況調査
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/R3_ICT_itaku.pdf

引用:厚生労働省 令和7年 介護保険最新情報
https://www.mhlw.go.jp/content/001591418.pdf

取締役 ヘルスケア事業部長 浦上氏
目次

介護現場で起きている悪循環

ーー介護現場の課題についてどのように捉えていますか。

浦上「介護現場にはさまざまな課題がありますが、今もっとも力を入れて取り組むべきだと感じているのは、現場スタッフの業務負荷と労働環境の改善です。介護は社会的ニーズが高いと言われているにもかかわらず、介護事業者の倒産件数はここ数年で過去最多を更新し続けています。」

浦上「その背景には、深刻なスタッフ不足があります。介護施設では、法令によって”介護施設の利用者数に対して配置すべきスタッフ数の基準”が定められています。つまりスタッフが不足すると、たとえベッドが50床あっても、必要な人員が確保できず 40床しか稼働させられないという事態が起きてしまいます。建物や設備の維持費は変わらないのに稼働数が下がることで収入は減り、その収支悪化が赤字化や倒産につながっています。」

ーー現場ではどのような状態が起きていますか。

浦上「介護職員の労働環境は、スタッフが減ることで一人ひとりの負担が増え、仕事がさらに忙しくなる。すると離職が増え、残った職員の負担がさらに大きくなるという悪循環に陥っています。国も補助金や業務改善策を打ち出していますが、現場の改善にはまだ届いていません。」

浦上「私たちは、この業務負荷の問題をAIやDXを活用して改善したいと考えています。業務負担を軽減して労働環境を整え、人材が定着し、離職コストも削減され、その結果、施設が安定して運営でき収益も改善し、さらなる設備投資や待遇改善につなげられる良い循環を創ることを目指しています。」

ーー地方の介護ならではの課題についてはいかがでしょうか。

浦上「地方では生活圏が広く分散しており、介護サービスは在宅・施設ともに点在しています。山間部にも市街地にも利用者がおり、ご家族が暮らす場所と、入居する施設、そして本人の自宅がそれぞれ離れているケースも珍しくありません。そのため、常に利用者の状態を把握したり、ご家族が安心して状況を確認できたりする遠隔での見守り体制をどう整えるかが、地方特有の大きな課題になっています。」

引用:OwlCare公式サービスページ

EMC Healthcare株式会社が提供する OwlCareは、介護施設向けのDXソリューションです。OwlCareは、従来ばらばらだった見守りセンサーやナースコール、モーションセンサー、ベッドセンサー、カメラなどを一つに統合し、AIを使って行動検知やバイタルモニタリングを行い、入居者の状態を常時リアルタイムで把握できます。

この仕組みによって、夜間の巡回回数を大幅に削減し、夜勤スタッフの業務負荷を軽減。施設の人員配置効率が向上し、業務効率化やコスト削減、さらには離職率低下にもつながります。また、最近では他の介護記録システムとの連携も進んでおり、データや通知を自動で連携することで、介護記録入力や管理業務の負担も軽減可能です。

このように、OwlCare は見守り、情報可視化、業務効率化、人材負担の軽減を通じて、介護現場の質と働きやすさを同時に高めるプラットフォームとなっています。

介護現場のデータを一元化し業務負荷を下げる

引用:OwlCare公式サービスページ

ーーサービス内容について教えてください。

浦上「これまで介護現場向けのソリューションは、さまざまなメーカーが個別に提供してきました。ナースコール、ベッド上の心拍・呼吸などのバイタルデータを測るセンサー、離床センサー、カメラ、ドア開閉センサーなど、本来つながってほしい機器がすべてバラバラに導入されているのが現状です。そのため、現場スタッフは複数のシステムを同時に操作せざるを得ず、データ活用の時代と言われながら、各機器のデータが連携されていないという課題がありました。」

浦上「私たちは、これらをワンストップで統合し、1つのシステムとして一元的に提供しています。例えば、心拍・呼吸などのバイタル異常アラートが出たら、そのまま同じ画面からナースコール対応ができ、ナースコールが鳴った時には、瞬時に居室の状況が映像やセンサー情報で確認でき、発生前後の利用者の体の状態も一目で把握できる。こうしたつながった見守りを実現することで、現場の業務負荷を大きく軽減できると考えています。」

ーーなぜそのような一元化が実現できたのでしょうか。

浦上「当社がこれを実現できた背景には、介護領域に参入する前の事業経験があります。会社の立ち上げ期から 医療機器の開発やデータ分析に取り組んでおり、その技術基盤があったことで、介護向けの複数機器を1つのプラットフォームとして統合することが可能になりました。」

夜間業務の負荷軽減と地域全体で支える介護

引用:OwlCare公式サービスページ

ーー導入効果について、現場ではどのような声がありますか。

浦上「もっとも喜ばれているのは夜間の業務負担の軽減です。高齢者の方は夜通しずっと眠っているわけではなく、体の痛みやトイレなどで起きることも多いため、職員は30分〜1時間ごとに居室を巡回し、様子を確認する必要があります。私たちのシステムでは、カメラ映像や心拍・呼吸などのバイタルを遠隔で確認できるので、無駄な巡回が減り、夜間業務が非常に楽になったという声を多くいただいています。また、利用者にとっても、頻繁にドアを開けられて眠りを妨げられることがなくなり、睡眠の質が向上するなど、健康面にも良い影響が出ています。」

ーー事故対応においても変化があるのでしょうか。

浦上「事故が起きた際、これまでは虐待がなかったか、どのタイミングで転倒したのかといった事実確認のために、警察や救急との対応にかなり時間を取られていました。しかし、バイタルデータやカメラ映像が記録として残ることで、状況をすぐに確認でき、対応時間が大幅に短縮されています。ご家族にも客観的なデータで説明できるため、誤解や不安を防ぎ、結果として介護職員を守ることにもつながっています。一般的には見守りは監視されているという印象を持たれがちですが、導入後は「守られている」、「働きやすい」という声をいただくことが多いです。」

ーーどのような施設で導入が進んでいるのでしょうか。

浦上「導入が進んでいるのは、地方で複数の介護サービスをグループ運営している法人です。特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、在宅介護などをまとめて手がけており、施設横断で利用者の状況を一元的に把握したいというニーズが強いことが背景にあります。」

社会福祉法人青藍会グループではOwlCareを導入し、夜間巡視を従来の3回から1回へ削減、月の夜勤人件費を約25%削減し、守り業務の負担軽減と人員配置の最適化を実現しています。

参考URL:https://www.owlcare.app/post/owlcare%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9

オープンな連携で地方の医療・介護課題の解決へ

引用:OwlCare公式サービスページ

ーーさいごに、介護と地域のあり方についてどのように考えていますか。

浦上「介護は医療よりも生活に密接に関わる分野で、介護職員だけが担うものではありません。地方にはさまざまな事業者やサービスが存在しており、リネン会社、食事提供会社、薬局など、多様なプレイヤーが利用者の生活を支えています。これら地域にあるすべてのリソースを上手に活用し、みんなで介護を支える仕組みをつくることが重要だと考えています。そのためには、データを共有し、地域全体が同じ方向に向かって動ける共通基盤が必要です。」

浦上「現在は、まずセンサーで利用者の状態データを収集している段階ですが、将来的には当社が持つデータと他社のデータも連携し、より幅広い形で活用したいと思っています。在宅介護への取り組みも始めており、施設と在宅のスタッフがチームとしてつながる仕組みを創ったり、画像を使ったデータ分析で次のケアに活かすといったチャレンジも進めています。」

浦上「地方の医療・介護の課題を解決するには、様々なプレイヤーが連携することが不可欠です。私たちの提供するOwlCareを地域のプラットフォームとして活用していただき、オープンな形で協働していきたいと考えています。特に、同じ思いを持つ地方自治体の方々と一緒に取り組むことで、介護に限らず、食事・生活・交通など幅広い領域とつながりながら、地域全体の課題解決につなげていきたいです。」

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